伝えたいことを明確にするために準備に時間をかけることが、「強い絵」につながる

2021年6月6日

前回の記事で、「 7月は、6月の学びを生かして渾身の1枚を描きます。 」と宣言しました。

そして完成したのがこちらのイラスト。 「夏の暑さと湿度を感じられるようなイラスト」がコンセプトです。

宣言どおり、6月の神作品鑑賞から得た学びを総動員して制作しました。

なかでもとくに意識したのは、「伝えたいことを明確にする」「描く前にしっかり準備をする」の2点です。

この2つを意識したおかげで、イメージが明確で伝わりやすい、「強い絵」が描けたと思います。

今回の記事では、イメージやメッセージを明確化するために、じっさいどんな事前準備をしたのかを共有します。

伝えたいことを明確にして準備に時間をかける→「強い絵」につながる

6月の「神作品鑑賞強化月間」から学んだことは、「明確にする」ことの重要性でした。

伝えたいイメージや主役をハッキリさせ、ノイズになる情報は捨てる。そうすることで画面にメリハリが生まれ、印象的な「強い絵」になります。

自分の欠点に、「全部大事に見えちゃう病」があります。

画面の中の情報に優先順位を付けるのが苦手で、メリハリがつけられません。その結果、見どころがはっきりしないボンヤリした絵になってしまうわけです。

この「全部大事に見えちゃう病」への対策として考えたことは、おおまかに分けると以下の3つ。

  • 「何を伝えたいのか」を明確にする
  • 描きたい内容を理解する
  • イメージを具体化し説得力を増すための資料を集める

これらを8つのステップに分けて準備を進めました。

まずは、いわゆる「5W1H」を考えることから始めました。

STEP1. 目的(どんな人に?何を?なぜ?)を明確にする

こちらが、制作の最初に描いたノートです。まあ恥ずかしいことがいろいろ書いてありますね。身が縮む思いです……

この事前準備工程は、基本的に『なるほどデザイン』を参考にしながらやっています。

ノートに書いてある「どんな人に?」「何を?」「なぜ?」等々も全部『なるほどデザイン』の10~11ページの図を参考にしています。

ちょっとイメージと違うな、という言葉もとりあえずどんどん書き出してみます。書いた中からよりそれっぽいと感じる言葉に丸をつけます。

この作業のおかげで、当初かなりモヤ~っとしていたイメージが少しずつクッキリしてきました。

次に、モチーフ・テーマ・コンセプトを考えます。

STEP2. モチーフ・テーマ・コンセプト

目的がはっきりしたら、それをどんなモチーフで伝えるか、何をテーマにするのかを考えます。今回は始める前から描きたいもののイメージはあったので、あまり悩まずサクッと決めました。

コンセプトは、「pixivなどにアップするときに使える、作品を簡潔に説明する一文」になるようにしました。

だんだん構想が固まってきました。さらにイメージを絞り出すために、連想ワードを書き出してみます。

STEP3. 連想ワードを書き出す

モチーフやテーマ、コンセプトから連想される言葉を思いつくままザザーッと書き出してみました。これけっこう時間かかった気がする……

最初ベタなワードしか思いつかなくて、連想・類語ワード検索とか使ったりしました。

STEP4. イメージを画像検索する

連想ワードと並行して、「トロピカル」「海」「水着」等々で検索してイメージに似た画像を探しては、せっせとPinterestに保存します。この作業は資料集めも兼ねていて、このあとも随時やっていました。

イメージが集まってきたら、どんなイラストを描くか内容を理解し、整理する段階に入ります。

STEP5. 図解・ラフ

見せたいものは何なのか?をはっきりさせ、優先順位を付けます。

見せたい順番に視線が誘導されるような画面構成を考えます。

STEP6. 表現の方向性・構造の方向性

どういう表現で行くかの方向性を決めるために、いくつか二択を書いてみました。この時点でかなりイメージは固まっていたので、ほとんど迷わず決めています。

構造の方向性では、縦と横どちらにするかと、おおまかな図形を使って構図を決めました。

ここまでのステップはすべて『なるほどデザイン』を参考にしています。デザインの本ですが、イラスト制作にも応用できると思います。

STEP7. 資料を集める

資料になりそうな画像を探して、Pinterestにガンガン保存していきます。

Twitterで「資料は500枚くらい集める」というのを目にし、「よし、私も500枚集めてみよう!」と意気込んだのですが……予想外に大変でした……。集中力が続かず、結局200枚ちょいしか集められませんでした。

でもここでたくさん資料画像を集めたことで、実際に描く段階で「これどうやって描くんだ?」と迷ったときに、あいまいにせず資料を見る意識を持つことができました。

さて、次が準備工程の最後。配色を考えます。

STEP8. 配色を考える

色の前に明度ラフを作りました。白黒状態でもちゃんと主役が目立つようにします。

それから色を決めていきます。去年やった配色練習シリーズの中の1枚を流用しました。

元にしたのは『配色アイディア手帖』Recipe003 「トロピカルフルーツ」です。

時々グラデーションマップを使って白黒にしてみます。先に決めた明度ラフと合っているか確認して、ずれていたらカラーバランスなどで色を微調整。

これで、事前準備完了です!

準備を通じて「自分は何を描こうとしているのか」が分かってくる

そんなわけで、 イメージやメッセージを明確化するためにやった事前準備を紹介しました。

みっちりと準備をしたおかげで、今回は「全部大事に見えちゃう病」を抑えることに成功したと思います。

準備を通じて、「自分は何を描こうとしているのか」がはっきり分かってきました。

逆に言えば、はじめの段階ではおぼろげにイメージがあるだけで、何を描こうか自分でも理解していない状態だったわけですね。

今までは、そんなふわっとした状態のまま、いきなり描き始めていたわけです。そりゃ描いた絵もボンヤリするわけです。

  • 「何を伝えたいのか」が明確になった
  • 描きたい内容を理解できた
  • 資料を集めてイメージを具体化し説得力を出せた

この3つができたことで、主役をブラさず、メリハリのある絵が描けました。『神作品』にはまだ遠く及びませんが、一歩くらいは近づけたんじゃないかなと思います。

さて、7月はがっつり1枚の絵に没頭していたので、8月は少し軽めの作品を1~2つ作る程度に抑えるつもりです。

そのかわり、 お盆休みを利用して、 映画や本などをたくさん摂取したいなと思います。頭の中に養分をたっぷりインプットしたら、9月以降はまたがっつり創作活動に戻ります。

おまけ:作業経過

その日の進捗状況をTwitterにアップする際にとった途中経過画像を並べてみました。

おまけ2: メイキング動画

下描き作業からの作業動画をつなげて20倍速にした動画です。1時間半もあるので、休憩でもしながらまったり眺めることをお勧めします。

おまけ3: 使用した素材

使用したブラシ素材など。漏れもあるかも……。素材作者様方に大感謝です!